北アルプス穂高の人気スポットといえば、ジャンダルムを挙げる人は多いでしょう
標高3000mの天空にある岩稜、通称「馬の背」と呼ばれるナイフリッジや「ロバの耳」と呼ばれるひときわ緊張を伴う崖を下降する箇所があり、手足を駆使してクリアーしてゆくスリルと爽快感は格別ですからね
穂高岳山荘を利用すれば体力も温存も可能なため多くの登山者に間口が開かれています
岳沢でテント泊の翌朝、天狗沢のガレ場を登り天狗のコルからジャンダルム、奥穂高岳、重太郎新道で岳沢に戻る周回ルートを紹介します
このバリエーションルートに求められる体力・技術
- 行動時間12-13時間のスタミナ
- 暗闇でのルートファインディング技術
- 基本的なクライミング能力、岩稜登山能力
出発早々、天狗沢のガレ場は落石や滑落を起こしうる悪路を暗闇のなかヘッドライトの明かりを頼りにルートを見極めながら進むことになります
1日目の夕方、突如ジャンダルムと奥穂高岳に降雪、
翌日、雪のジャンダルムや岩稜を夏靴で通過することになり、難易度が格段に高くなりました
当初予定した飛騨尾根のクライミングを諦めてそのまま周回した山行を紹介します
良いところ
- 北アルプス穂高から息をのむ眺望
- 岩稜帯、ナイフリッジなどテクニカルな要素があり楽しい
アクセス
■沢渡駐車場
沢渡には駐車場が複数個所あります
連休や紅葉などの人気の時期では早朝でも駐車場が満車になりますので注意しましょう
料金 1日700円 (我々が使用した臨時駐車場)
■沢渡駐車場から上高地
マイカー規制のため、駐車場からバスやタクシーに乗り換えてゆく必要があります
- バス
混雑する時期は、チケット購入に並び、さらにバス待ちで並びます
- タクシー 一台5200円(定額制) 2024年10月現在
タクシーは駐車場にいらっしゃる担当者に申し込みをします
3-4人なら時間的・費用を考えるとタクシーが良いかもしれません
行程
1日目 上高地ー岳沢小屋
透明度の高い梓川の向こうに明神岳、前穂高、奥穂高に囲まれるカールが見えて気持ちが馳せます
岳沢小屋までは重い荷物を持つと3時間程度かかる登りです
2泊3日のテント泊、食事、登攀具、カム一式、ロープなどで25kgほどの荷物を担ぎましたので案外大変です
途中の風穴まではハイキングでも行きやすいように道が整備されています
■岳沢小屋 テント泊
岳沢小屋でテント場の利用受付します 1日一人2,000円
テントを張れる数はあまり多くないので混雑する時期は上高地についた時点で電話で混雑状況を確認しておいた方が安心です
山小屋はとても整備されていますので、テント泊でもその恩恵を得られます
水は無料 (水を担ぎ上げなくてすむのでとてもありがたい)
トイレが完備
ランチ(昼の時間のみ) カレーやおでんなど
販売 アルコール、軽食販売があります
■テントを設営
今回は登攀具、ロープ類などと荷物がかなり多いことから
テント(居住)とツエルト(道具類用)を張りました
午後5時 雨上がりの夕暮れ テント場から上高地方面を眺める いい感じです
岳沢テント場は大雨でしたが、見上げるとジャンダルムと奥穂高岳では雪がついているのが見えました
この雪が明日の予定を狂わすことになるのでした
二日目 天狗沢、ジャンダルム、奥穂高、重太郎新道
岳沢に戻るまでの周回は、休息時間も含め12-13時間程度の工程になります
天気の安定している午前中に奥穂高のピークを踏み、午後の遅くならないうちに岳沢へ戻れるように計画しましょう
私たちは早朝1時起床、朝食をしっかりとって午前2時半に出発しました
■岳沢小屋 - 天狗のコル (3時間)
天狗沢は登り始めるとすぐに大きな岩の落石で作られたガレ場を登ることになります
足場が崩れて落石を誘発したり滑落しうる危険があるうえ、夜明け前の暗闇をヘッドライトの明かりの下で進むことからルートを見失いがちです
慎重な行動とGPSでの確認するようにしましょう
ヤマレコは、みんなが歩いた軌跡が地図に表示されます
「みんなの足跡」はルートファインディングの際にとても役立ちます
有料会員ではさらに一般登山以外のクライミングや冬期などのみんなの足跡も表示できるようになるので、アルパイン山行をする私は重宝しています
大きな岩の合間にある天狗のコルに到着するころには夜が明けます
眼下に広がる雲海や山の重なり、前穂高のシルエット、天狗沢のカールの全貌に魅了されることは間違いないでしょう
■天狗のコル ー ジャンダルム (3時間30分)
天狗のコルで雪の多さに驚きました
夏靴での岩稜登攀、この先さらに高度を上げて積雪量が増えているのではと、進退を考えましたが進むことにしました
ここからは岩稜帯の登りが続きますので、慎重に三点支持をしてゆきましょう
うれしいのは、朝日に照らされる雲海や山々のシルエットが視界の中で続くことです
昨日の降雪で行動不能となりコブ尾根の頭でビバークを余儀なくされたパーティーに出会いました
幸い彼らは寝袋に二人で入ったりして難をのがれていました
秋の北アルプスでは雪を含めた悪天候を想定して装備を持つことの大切さを思い知らされました
コブ尾根の頭で降雪時にビバークして一夜を過ごし難を逃れたパーティとの出会い
ジャンダルムに向けてさらに進みます
3000mから眺める絶景がつづきワクワクが止まりません
ジャンダルムが見えてきました
らせん状の回廊があるようにみえます
もしあなたがクライミングを心得ているのであればジャンダルム頂上直下をフリークライミングで上がることもできます
ただし頂上付近は浮き石が多くて気が抜けません
絶対に無理をなさらないでくださいね
この飛騨尾根でのアルパインクライミングを計画してきました
しかし積雪のためクラミングを断念することにしました
重たいロープと登攀具一式を担いできたというのに残念です
■ジャンダルム
想定外の雪のジャンダルムです
いまは4代目の天使が待っています
360度の見晴らし、奥穂高や槍ヶ岳などの穂高連峰をながめれば笑顔にならない人はいないでしょう
■ジャンダルム ー 奥穂高岳 (2時間)
ロープをはって前後の登山者の下降支援をしました
奥穂高側にすすんで、ジャンダルムを振り返り見ると絶壁の要塞としてそびえる姿に圧倒されます
ここから奥穂高岳までは、岩稜帯のトラバースや急斜度を下降する場所があります
日陰になるため雪の量がかなり多くついておりこれまで以上に気を遣う場面が多くなりました
通称「ロバの耳」の下降
断崖絶壁をほぼ垂直に下降します
雪がなくてもこの下降には慎重さを最も要求される場所です
この積雪のためもはや夏靴でロバの耳をクライムダウンすることは滑落に直結するほど危険な状態でした
前をゆく登山者がここで進退窮まってしまいました
我々がクラミングをするつもりで持ってきたロープを張って前後の登山者が下降するのを支援しました
通称「馬の背」
ゴジラ(馬)の背中のように薄い岩を重ねたナイフリッジをゆきます
足も手もしっかりあるので特別難しいわけではありません
両側が切り立っている谷下をみる姿勢をとるので、いやおうなしに高度を感じる場所です
■奥穂高岳
遠くは富山連邦、槍ヶ岳、常念岳、眼下に広がる唐沢カールの紅葉を一望にでき思いにふけること間違いなしでしょう
■奥穂高岳 卑弥呼平 重太郎新道 岳沢 (3時間)
あとは岳沢小屋まで降ることになります
卑弥呼平までの吊尾根は高度を保っての横移動です
つづく急斜面の重太郎新道をくだります
岳沢をかこむカールにはうっすらと紅葉、緑のコントラストがとても美しく、その向こうの梓川が緩やかなカーブを描く上高地の風景が続きます
まるで絵画の中に飛び込んだような気分になることでしょう
岳沢から見上げる周回してきた稜線
山肌には西穂高岳の峰々が鋸のように影を映しています
テント2泊目へ
装備、服装
- 水 2L
- 行動食、昼食
- 防寒 薄手のフリース、雨具上下
- 手袋 薄手
- 靴 ハイカット
早朝は天狗沢の岩も凍っていました
標高3000mの気温 0度程度
風が穏やかでしたので行動中には寒さを感じませんでした
秋のジャンダルム、奥穂高岳はまさかの降雪もありうることからビバークできる装備の携行も必要ですね
天狗沢の大きな岩のガレ場やジャンダルムから奥穂高岳までの岩稜帯でちょっとした登攀でも靴の周囲をこすりながら進む場面が多々あります
ハイカットで全体に足を保護できる
長時間の岩稜をすすむため適度なクッションにより膝を痛めない
登山靴が適しています
lowaは日本人の足形に合わせた設計であり、多くの方にも合う可能性があります
今回の3日間の山行で足を痛めることはありませんでした
まとめ
標高2000mあたりは秋の紅葉ですが、標高3000mは冬山にもなりうる時期です
この時期は、降雪にも対応できる装備を用意しておくべきだと実感しました
岳沢を拠点にして、天狗沢からジャンダルム、奥穂高岳を目指し、重太郎新道でもどる周回ルートを紹介しました
天候がよく体力とクライミング経験があれば、挑戦できるルートです
万全の準備をしたうえで、絶景の中で楽しめるバリエーションルートをぜひ堪能してみてください